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なぜフランス人はデモ・ストライキをするの?

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最近フランスでは頻繁にデモやストライキが起こっています。日本にはあまりデモなどの文化がないので、「どうしてデモをするんだろう?」「デモの結果、何か変わるの?」という疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。

今回はフランス人がどうしてデモやストライキをするのか、その歴史的背景や近年のデモ内容などを交えてご紹介します。

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フランスのデモの歴史

バスティーユ襲撃事件〜フランス革命の重要性

Scenic evening view of the Bastille Square and boats on Canal Saint-Martin in Paris, France.

1789年7月14日、パリにおけるバスティーユ牢獄の襲撃は、フランス革命の象徴的な始まりとされています。バスティーユは王政下で、王権の専制、利己的理由での拘留、圧政の象徴とされていた場所でした。事件発生当時、実際には囚人はわずか数名しかいませんでしたが、その存在自体が「王権の抑圧」「人民の自由を妨げる力」の象徴として国民にとって大きな意味を持っていました。

この襲撃によって、ただ牢獄を奪うという物理的行為だけでなく、「人民が王権に直接挑むことが可能である」「支配体制を変え得る」という意識が広く共有されるきっかけとなりました。そこで生まれた「自由・平等・友愛(Liberté, Égalité, Fraternité)」という理念は、その後の憲法、人民主権、権利宣言などに影響を与えます。

バスティーユ襲撃は、当時の人々が抱えていた不満(物価の高騰や重い税金・貴族や教会の特権)が一気に噴き出した結果の出来事でした。つまり、市民が行動によって不満を示し、それが政治を変える力につながった最初の大きな例といえます。

デモの始まり

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「デモ」という言葉が意味するような、組織された市民の意見表明・集会の形は、フランス革命以前にも存在していました。それが、現代のデモに近い形で「市民が平和的に(あるいは部分的に暴力を含みつつ)集まって要求を掲げる活動」が定着し始めたのは18世紀末の革命期のこと。

その後、1789年の三部会招集など、市民や地方の有力者たちも含む集まりが、国王政府に対する制度的な改革を求める形で動き出します。これもまた、デモの起源または先駆的な形として重要なポイントになっています。

フランス革命の前には、民衆の不満と地方での抵抗が、制度や特権に対する問題点を公にする形で頻繁に現れていたことが、デモの土台を築いたといえます。

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フランスの制度的背景

フランスでは、デモやストライキが「やりやすい」環境が制度的に整っています。

憲法での保障

A hand holding a rainbow-colored heart against a clear blue sky, symbolizing love and pride.

1789年の「人権宣言」以来、表現の自由・集会の自由は基本的権利として強く位置づけられています。現行の第五共和国憲法でも、これらの権利は民主主義の根幹とされています。

届け出制の仕組み

フランスのデモは「許可制」ではなく「届け出制」です。事前に警察へ通知すれば原則として認められるため、市民は比較的気軽に街頭行動を起こすことができます。

労働組合の役割

労働組合の組織率は約8%と低めですが、動員力が強く、ストライキやデモを組織する能力に長けています。特に交通・エネルギー・教育など公共部門の組合が強い影響力を持ち、国家全体を止めるほどのインパクトを与えることもあります。

交渉の一環としてのデモ

Close-up of a handshake between two professionals in a modern office setting, emphasizing partnership and agreement.

政府や企業との交渉では「話し合い」と「街頭での圧力」がセットで行われるのが一般的です。議会や委員会での議論に加え、社会的な圧力を示すことで交渉力を高める文化が定着しています。

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デモが活発な文化的背景

デモを行う土台が制度的に整っていることに加え、フランス人の「社会に対する向き合い方」に根付いた文化的背景も大きな要素です。

革命の記憶と誇り

バスティーユ襲撃やフランス革命の記憶は、単なる歴史的出来事ではなく「国民のアイデンティティ」の一部です。「不正義に対して立ち上がることは市民の権利であり義務である」という考え方が広く共有されています。

公共空間での発言文化

フランス人にとって、意見ははっきりと表明するものです。議論や抗議は「社会に参加する」方法であり、沈黙するよりも「声を上げる」ことが美徳とされる傾向があります。

デモの社会的正当性

フランスでは、デモは「迷惑な行為」ではなく「民主主義の大切な活動」として受け止められています。新聞やテレビも大きく取り上げ、市民の声を社会に広げる役割を果たしています。

連帯の経験

フランスでは、職業や世代の違いをこえて一緒に行動することが大切にされています。デモは個人の不満ではなく、みんなで社会の問題を考える場として役立っているのです。

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なぜフランス人はデモをするの?

フランス人が頻繁にデモを行うのは、

歴史的に民衆が街頭で政治を動かしてきた過去
憲法や法制度による保障
労働組合や届け出制度による組織しやすさ
「声を上げることが正義である」という文化的規範

これらの要因が重なり合った結果です。

日本から見るとフランスのデモは「騒がしい」と思えるかもしれませんが、フランス人にとっては「民主主義を守るための当然の行動」です。街頭に出ることは、彼らにとって投票と同じくらい重要な「市民の責任」なのです。

フランスの近年のデモ・ストライキ

近年は「黄色いベスト運動」に始まり、政治に対するデモ活動が盛んです。特に目立っているのは年金改革をめぐる抗議運動です。2023年に、マクロン大統領の政権が「法定年金受給開始年齢を62歳から64歳へ引き上げる」案を提出したことに対し、全国的なデモ・ストライキが起こりました。

ここでは近年のデモ・ストライキで大規模なものをリストアップしてみます。

日時内容動員人数
2025/09/18予算案への抗議50万〜100万人
2025/09/10予算案への抗議17,5万〜25万人
2025/05/01労働者の日(5/1)恒例のデモ15,7万〜30万人
2024/01/18〜2024/01/26農業従事者による状況改善を求める抗議高速道路の封鎖
2023/06/27〜2023/07/05警官によるナエル・メルズーク少年の銃殺事件への抗議逮捕者/3,651人
死亡者/2人
2023/05/01年金制度改革への抗議
労働者の日恒例デモ
78,2万〜230万人
2023/04/13年金制度改革への抗議38万〜100万人
2023/04/06年金制度改革への抗議57万〜200万人
2023/03/28年金制度改革への抗議74万〜200万人
2023/03/23年金制度改革への抗議109万〜350万人
2023/03/07年金制度改革への抗議128万〜350万人
2023/02/11年金制度改革への抗議96,3万〜250万人
2023/02/07年金制度改革への抗議75,7万〜200万人
2023/01/31年金制度改革への抗議127,2万〜280万人
2023/01/19年金制度改革への抗議112万〜200万人
2020/01/24年金制度改革への抗議24,9万〜130万人
2020/01/16年金制度改革への抗議18,7万〜55,6万人
2020/01/11年金制度改革への抗議14,9万〜50万人
2020/01/10年金制度改革への抗議
(SNCF1によるストライキがこのあと37日間続く)
SNCFストライキ
2020/01/09年金制度改革への抗議42,5万〜170万人
2019/12/17年金制度改革への抗議61,5万〜180万人
2019/12/05年金制度改革への抗議80,6万〜150万人
  1. フランス国鉄 ↩︎

年金改革への抗議デモは2010年頃からありましたが、2019年・2020年にかなり活発になりますが、2020年春頃から新型コロナウイルスの大流行に伴い、デモ活動は制限されていきました。コロナ収束後に再び活発になり、結果として年金改革案の持ち越し・再検討となりました。

2024年はパリオリンピックの開催もあり、デモに関しては比較的落ち着いた年でした。

しかし、2025年は首相の任命の遅れに予算案への不満が高まり、大規模なデモ活動がすでに数回行われています。デモ活動の中では、エマニュエル・マクロン大統領の辞任を求める声も高まっています。

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デモの結果変わったこと・影響はあるの?

政策や法律への影響

デモやストライキによって、政府が政策の内容や手続きを再検討した例は多くあります。たとえば、2023年の年金改革では、政府は国民の強い反発を受け、「対話する姿勢」を示すことを余儀なくされました。議会での議論が続けられ、政治的に敏感な問題となりました。

ただし、「完全撤回」に至るケースは限られていて、多くの場合は妥協や一部変更、あるいは実施方法を調整することで収束しています。

社会・世論への影響

デモは政策に影響を与えるだけでなく、人々に問題を意識させるきっかけにもなります。テレビや新聞で広く伝えられることで、「多くの国民がこの政策に反対している」ということが知られ、政府の立場が揺らぐこともあります。そして選挙や地域の政治に影響することもあります。

さらに、デモを通じて労働組合や市民団体のつながりが強くなります。職業や世代の違いをこえて一緒に行動する経験が、人々の結びつきを深めるのです。

政治文化への影響

フランスでは、デモやストライキは正統な手段として市民が政治に参加する道の一つと認識されています。国民世論においても、「政府が一方的に決めること」に対する抵抗が、むしろ民主主義の健全性を保つために必要だという考えが根強くあります。

「公共の利益」「社会的正義」という言葉が政策議論の中心になるのも、この文化の影響です。デモがあることで、政策決定者は「後ろ盾としての国民」の姿を強く意識せざるを得なくなります。

まとめ:なぜフランス人はデモをするのか

バスティーユ襲撃から始まったフランス革命という歴史が、フランス人のDNAには刻まれているような気がします。また、自分の意見を持ち主張することを美徳とする考えや教育指針も大いに関わっています。そこに加えて、制度的にもデモやストライキを後押しする仕組みが整っていることからフランスではデモやストライキが盛んになるのは当たり前かもしれません。

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