パリの劇場といえばオペラ座が有名どころですが、実はほかにも大小さまざまな劇場があります。そこでは毎日、ダンス、コメディ、ワンマンショー、ミュージカルなどいろんな舞台が上演されています。
今回は、ミュージカルの定番「オペラ座の怪人」を観劇してきたので、その様子を紹介していきます。
目次
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Klook.com歴史的建造物のひとつ「アントワーヌ劇場」
今回、オペラ座の怪人を上演しているのはパリ10区にある「アントワーヌ劇場(Théâtre Antoine)」。今回観劇に行くまで、アントワーヌ劇場のことを知らなかったので、少し調べてみました。
アントワーヌ劇場の歴史
アントワーヌ劇場は1866年にオープンし、150年以上もの歴史を持つ劇場です。
最初の名称はThéâtre des Menus‑Plaisirsでしたが、1888年から1897年に著名な演出家André Antoine が設立した劇団の本拠地となったことから、現在の「アントワーヌ劇場(Théâtre Antoine)」という名前になったそう。
1989年にはその建築的・歴史的価値から、フランスの歴史的建造物にも登録されています。
建築的特徴

アントワーヌ劇場はイタリア式劇場として設計されています。外観はシンメトリックで中央3階部分にはバルコニー付き。窓はステンドグラスになっていて、昼間は目立たないけど夜はとってもきれいです。

入り口周りの電飾看板はかなりレトロな雰囲気で、ストラスブール・サン・ドニの街並みに馴染んでいます。正直、ストラスブール・サン・ドニあたりはあまりおしゃれなエリアではなくて、殺伐とした雰囲気や異国情緒感が強いのですが、時代を感じるアントワーヌ劇場の外観はそこにばっちりハマっています。
アントワーヌ劇場のあるストラスブール通りは何度も通ったことがありましたが、劇場があることにはそれまでまったく気が付きませんでした。(あまり治安がよくないので足早に通り過ぎていたことと、この辺にはおしゃれなカフェもレストランもないと決めつけて回りを見ることをしなかったからかも)
でも観劇の帰りに周りをよく見ながら歩いてみると、小さな劇場がいくつもあって、平日でしたが入口前には人だかりができていることろもありました。このエリアは実は劇場が多い場所なんだそう。まだまだわたしの知らないパリがたくさんあるな〜と感じました。
劇場内部
場内も外観同様、かなりレトロ!ホールというほど広くもないスペースを抜けると、すぐに劇場の入口です。
劇場に入るとベル・エポック期らしい華やかさが出迎えてくれます。赤いベルベットの座席、金色装飾のバルコニー、豪華なシャンデリアなどは当時の劇場の雰囲気のまま。座席はけっこう狭くて窮屈で快適さはないですが、これも歴史ある劇場の醍醐味?ですね。
劇場の形はヨーロッパの典型的な馬蹄型の客席配置です。収容人数は780席ほど(800席前後という情報もあり)で、規模としては中規模サイズの劇場です。

2階にはバーがあって飲み物を飲むことができます。ここは一面サーモンピンクの壁にステンドグラスの窓でかなりレトロ!19世紀後半〜20世紀初頭のナポレオン様式の内装なんだそう。

壁のポスターやイラストも時代が感じられて、ちょっとタイムスリップしたような気分になります。絨毯張りの床も一昔前の上品さがあって、個人的には好きなポイントでした。
コメディミュージカル「オペラ座の怪人」
ここからはアントワーヌ劇場版「オペラ座の怪人」を、観劇した感想とともにご紹介していきたいと思います!
いざ観劇へ!
上演開始は19時。18時半頃劇場についたときには、すでに入口前で待っている人が何人もいました。みんな待ち合わせ相手を待っているようでした。
ヨーロッパの劇場マナー💰
わたしもパートナーの到着を待って中へ。係の人に予約チケットを見せ、バーコードで読み取ってもらいます。ハキハキと劇場の入口を説明され、劇場の中へ。
扉の中へ入ると案内係の人がいて、座席を案内してくれます。わたしたちがそれに気づかずに奥へ進んでいくと、「扉の前でお待ち下さい。」と。席は、案内係が来るのを待って案内してもらわなければいけません。
案内を受けて座席につこうとしたその時、案内係からチップを促されました。これはヨーロッパの劇場によく見られる光景で、座席の案内係にはチップを渡す習慣があるんです。昔、案内係の給料が安かった時代はチップは重要な収入の一部だったそう。その名残で、今でも特に小中規模の劇場などではチップの習慣があります。
もちろんこれは義務ではなく任意なので、断っても大丈夫。渡すとしたら金額は1〜2ユーロほど、多くても5ユーロほどでOKです。大きくもないアントワーヌ劇場では、正直案内係なんて必要ありません。それでもこの習慣を続けているのは、伝統を残すためか、金銭的な理由のためか。
国立や公共の劇場(オペラ座やコメディーフランセーズなど)では、チップは禁止だったり受け付けていないことが多いみたいです。確かにオペラ座ではチップは求められなかったな。私営の劇場は、昔とは違い給料も上がっているとはいえ、小中規模の劇場は経営などは大変なんだろうなと思います。
舞台と距離が近い!小中規模ならではの距離感
わたしの座席は前から3番めの真ん中あたり。オペラ座などのようにオーケストラスペースもないので、すぐ目の前が舞台です。規模の小さな劇場ならではですよね。
開演時間を少し過ぎた頃、客席の後ろからマダム・ジリーがやってきて、座席通路に設置された台の上で開演を知らせました。ちょっとユーモアの混じったセリフで、客席からは笑い声も。わたしの席のすぐそばだったので、表情までよく見えました。マダム・ジリーは上品な顔のきれいな人でした。
マダム・ジリーが去ると、舞台の幕が上がり上演スタート!
舞台は、ここでオペラ座の怪人ができるの?と思うほど小さめで、ただ奥行きはけっこうあるみたいでした。
新解釈のコメディミュージカル
オペラ座の支配人、ラウル、カルロッタ、クリスティーヌなどおなじみの登場人物が登場し、物語が始まっていきます。すると途中でモダンなダンスシーンが。ライト演出もあり、音楽もオペラ座の怪人では聞いたことのない音楽です。
わたしは何も知らずに見に行ったんですが、なんとこれはアンドリュー・ロイド・ウェバー版とは違う、完全オリジナルなオペラ座の怪人だったんです!
物語のベースはガストン・ルルーの小説オペラ座の怪人ですが、アンドリュー・ロイド・ウェバー版のミュージカルとは演出も音楽も違います。現代版に再解釈された演出で、コメディ要素とダンス要素ありの新しいオペラ座の怪人なんです。
オペラ座の怪人といえば、「ジャーーン、ジャジャジャジャジャーン」じゃないですか。あの音楽はいつ来るのかと待っていたけど、来るはずがありません。だって別バージョンのミュージカルなんですもん。
オペラ座の怪人の歌が聞けなくてちょっと残念な気持ちはありましたが、歌声がみんなすてきでだんだん引き込まれていきました。クリスティーヌもエリックもラウルもカルロッタも、役のイメージ通りの歌声でした。
基本的なストーリー構成と登場人物は原作と同じで、カルロッタの声が変わってしまう、シャンデリア落下、地下での対決などのシーンもあります。上映時間は休憩なしの1時間20分と、かなりコンパクトにまとまっているので、それぞれのシーンもかなりコンパクトになっている印象でした。
衣装も原作の雰囲気を残しつつ、モダンなスタイルを織り交ぜていました。セリフについてはフランス語なので、現代のような話し方なのか昔風の話し方だったのか、そこまでの違いはわたしには分からず。
ちなみに舞台の上部には英語と中国語の字幕つき!字幕を読みたい人は少し後ろか2階席のほうが見やすそう。前の方だと視界に入りません。
拍手喝采で閉幕
演出やストーリの詳細は、実際に観に行きたい!という人のために省略しますが、拍手喝采で閉幕。スタンディングオベーションまではなかったですが、長い時間拍手が続いて、わたし含めお客さんがみんな心からこの舞台に拍手を送っていたと思います。
コメディミュージカルということでしたが、コメディ要素は強すぎず、基本ストーリーが原作に沿っているところが個人的にはよかったです。
ミュージカル1時間20分は短めですが、終わってみるとちょうどよかったように感じます。座席に快適さがないのと、前の方の席は舞台を少し見上げる姿勢になってしまうので、首がちょっと辛い。このくらい短い時間でよかったです。
歌声がステキ!出演者を調べてみた
今回のオペラ座の怪人で一番印象的だったのは、役者さんたちの歌声。みんな役にぴったりの歌声だし、とにかくうまい!
エリックはマスクを付けていると顔がイマイチ分かりませんが、マスクを取ったらかなり男前。歌声も力強くも儚さが感じられたり、怪人の怒りと悲しみが伝わってくるようでした。
カルロッタもボリュームのある体型からオペラ歌手さながらの歌声までイメージ通りで、個人的にとっても好きな役者さんでした。
怪人(エリック)役 Bastien Jacquemart
とにかく歌声がステキだなと思っていたら、実は10年ほど前にもオペラ座の怪人でラウル役を演じたことがあるそう。こちらはアンドリュー・ロイド・ウェバー版のオペラ座の怪人でした。
俳優や歌手としても活動しているそうで、YouTubeで歌声を聞くこともできるので、気になる人は探してみてね。
クリスティーヌ・ダーエ役 Maélie Zaffran
まだ20代前半の若い女優さんです。大きな舞台経験は今作が2回目。前回はマンマ・ミーアのソフィーを演じています。
ラウル役 Louis Buisset
フランスとアメリカのハーフだそう。
カルロッタ役 Ana Ka
今回の出演者の中でいちばん有名なのが、カルロッタを演じたアナ・カー。音楽オーディション番組The Voice(フランス版)に出場したことがあり、インスタグラムのフォロワーは1,5万人ほどいます。2024年のディズニー映画モアナと伝説の海2では、マタンギ(セリフ・歌)の吹き替えを担当しています。
「オペラ座の怪人」上演情報
アントワーヌ劇場のオペラ座の怪人は2025年10月22日から2026年1月11日まで上演予定です。水曜日から日曜日にかけて、毎晩19時から上演しています。
アントワーヌ劇場の予約方法
チケットは公式サイトから予約可能です。
そもそもミュージカル「オペラ座の怪人」って?
ミュージカル「オペラ座の怪人」は、アンドリュー・ロイド・ウェバーによって生み出された世界中で愛されている作品です。原作はガストン・ルルーの小説で、19世紀のパリ・オペラ座を舞台に、美しい歌姫クリスティーヌと、オペラ座の地下に潜む謎の存在“ファントム”との切ない愛の物語が描かれています。
物語の中心となるのは、天才的な音楽の才能を持ちながら、外見のコンプレックスから地下に身を潜めて生きるファントムです。彼はクリスティーヌの才能を見抜き、密かに導いていきますが、やがて彼女の幼なじみであるラウルが登場したことで、三人の思いが複雑に絡み合っていきます。美しくも苦しい恋心がぶつかり合う物語です。
ミュージカル「オペラ座の怪人」と聞くと、多くの人がアンドリュー・ロイド・ウェバー版を思い浮かべるのではないでしょうか。確かに、1986年にロンドンで誕生した彼の作品は、圧倒的な音楽とスケール感で世界中の観客を魅了し続ける代表的な存在。
しかし、実は「オペラ座の怪人」はウェバー版だけでなく、さまざまなクリエイターが舞台化してきた歴史を持っています。そしてその一つが、アントワーヌ劇場で上演中のオペラ座の怪人です。
アントワーヌ劇場の「オペラ座の怪人」はアンドリュー・ロイド・ウェバー版とは違い、コメディ要素を織り交ぜた演出とコンパクトにまとまった物語が魅力。パリの歴史ある劇場で新バージョンの「オペラ座の怪人」を観劇してみてはいかがですか?




