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ルーヴル美術館の大規模改修工事「新ルネサンス計画」とは?モナリザ特別室の詳細

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世界でもっとも訪問者数の多い美術館、ルーヴル美術館が大きく生まれ変わろうとしています。2025年1月にマクロン大統領が発表した「新ルネサンス計画(Nouvelle Renaissance)」は、約40年ぶりとなる大規模改修プロジェクトです。

この記事では、パリ旅行を計画している人に向けて、計画の詳細から訪問への影響まで、最新情報をお届けします。

目次




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先日、マクロン大統領によって、ルーヴル美術館の大規模な改修工事計画「新ルネサンス計画(Nouvelle Renaissance)」が発表されましたね。そのなかでも、「モナリザ」の特別展示室の増設には驚いた人も多いのではないでしょうか。

「新ルネサンス計画」は、大規模な改修・再構築プロジェクト で、約10年(2031年完成予定) をかけて実施する予定の長期プロジェクトです。

この記事では、計画の内容を説明しながら、プロジェクトの進行具合も少しずつレポートしていきたいと思います。

なぜ今ルーヴル美術館を改修する必要があるの?

訪問者数の急増と施設の限界

ルーヴル美術館でもっとも有名な作品「モナ・リザ」
△現在のモナリザ展示室

ルーヴル美術館は、1980年代のミッテラン大統領時代に実施された「大ルーヴル計画(Grand Louvre Project)」以来、大規模な改修が行われていません。入口のあの象徴的なガラスのピラミッドは、この計画の際に設置されたもので、年間400万人の訪問者を想定して設計されました。当時の年間入場者数は280〜300万人と推計されていて、当時の来場者に十分に対応できるはずでした。

パリのルーヴル美術館のメイン入口、ピラミッド
△「大ルーヴル計画」で作られたピラミッド入口

しかし現在はどうでしょうか。ここ10年の年間入場者数は700万を超えていて、2024年には約870万人を記録しています。つまり、設計時の想定の2倍以上の人々が訪れているんです。

ルーヴル美術館を訪れた際、あまりの行列の長さに気が遠くなったことがある人もいるはず。現在、美術館への入口は2箇所しかなく、来場者数に対応できていないのは明らかです。



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深刻化する混雑問題

ドラクロワの有名な作品「民衆を導く自由の女神」はルーヴル美術館に展示されている
△観光客であふれるルーヴル美術館の館内

入場者数の急増を受けて、美術館側は2022年に1日あたりの訪問者数を3万人に制限する措置を導入しています。入場チケットが時間指定になり、入場時間が分散されるようになった点では、入場時の混雑も抑えられているように見えますが、年間入場者数は増加傾向にあります。

特にモナリザの展示室での行列や人気展示室の混雑ぶりは抑えられず、根本的な解決には至っていません。

老朽化する建物と設備

観光客として美術館をまわっていても気づく人はほとんどいないと思いますが、建物の一部では水漏れや温度管理の問題が発生しているのだそう。貴重な収蔵品の保存環境にも影響があり、その危険性が高まっています。

2025年10月19日には宝飾品盗難事件が発生し、セキュリティ面でも課題があることが明らかになりました。わずか数分で王冠の宝石が持ち去られたこの事件は、施設の脆弱性を浮き彫りにしました。

現場からは安全性や老朽化対応が優先されるべきという声も。職員・労働組合による計画への批判や優先順位への疑問も出ているそう。



「新ルネサンス計画」の全貌

2つの大きな柱

この計画は2つの主要な部分で構成されています。

◆ ルーヴル・グランド・コロネード(Louvre – Grande Colonnade)

ルーヴル・グランド・コロネードは、美術館の中心部に新しいアクセスと空間を創出するプロジェクトです。東側のペロー大列柱廊に新しい入口を設置し、中庭(クール・カレ)の地下に新しいモナリザの専用展示空間を建設します。ほかにも新しい展示空間や特別展示ホールの増設も予定されています。

◆ ルーヴル・ドゥマン(Louvre Demain)

ルーヴル・ドゥマンは、インフラと設備を全面的に改修する計画です。老朽化した設備の更新、気候変動への対応、デジタル技術の導入などが含まれます。

周辺環境の再整備

新ルネサンス計画は、ルーヴル美術館の内部だけでなく、周辺環境の再整備も含んでいます。カルーゼル庭園とチュイルリー公園が、気候変動に配慮した持続可能な緑地空間として整備される予定です。

パリにあるすフランス式庭園、チュイルリー公園。美しい花と彫刻、奥にはエッフェル塔が見える。
△チュイルリー公園

カルーゼル庭園は夏になるとピクニックを楽しむ人でいっぱいになる、ルーヴル美術館すぐ前のグリーンスペース。チュイルリー公園はそのとなりにある、広さ約25haの大きな公園です。ルーヴル美術館を訪れたついでに足を運んだことがある人も多いのではないでしょうか。今でも十分美しい緑地空間ですが、どんな変化があるのか楽しみです。

美術館と周辺の都市環境をよりよく接続することも目標の一つ。パリ市との協力のもと、美術館の東側ファサード(カルーゼル庭園・チュイルリー公園がある場所と反対側)から広場まで、都市空間の再開発が行われます。

職員の労働環境改善

この計画は、訪問者だけでなく、約2,300名の美術館職員の労働環境改善も目指しています。適切な空調設備、休憩スペース、バックヤード施設の整備など、スタッフが快適に働ける環境を整えることで、よりよいサービスの提供につながることが期待されています。

デジタル技術の導入

新しい美術館では、最新のデジタル技術が導入される予定です。オンライン予約システムの強化、館内ナビゲーションの改善、作品解説のデジタル化など、21世紀にふさわしい美術館体験が提供されるそう。

ルーヴル美術館のような所蔵作品が多い美術館では、作品の解説が欠かせません。今よりももっと利用しやすいガイドが誕生すればうれしいですよね。

アクセシビリティの向上

すべての人が文化にアクセスできるようにすることも、計画の重要な目標です。車椅子利用者や視覚障害者など、さまざまな方々にとって利用しやすい施設となるよう、バリアフリー設計が徹底されます。

総工事費と資金調達

計画全体の総工事費は、約7億から8億ユーロ(約1,050億から1,200億円)と見積もられています。一部では10億ユーロに達するのでは、との声もあり、かなりの規模の工事になるのは確実です。

このうち、新しい入口の増設とモナリザ専用ギャラリーなどに約2億7,000万ユーロ、残りの約4億5,000万ユーロがインフラ整備に充てられる予定。

注目すべきは、この費用のほとんどが美術館の自己資金で賄われるという点です。具体的には、入場料収入、民間からの寄付金、そしてルーヴル・アブダビからのライセンス料が主な財源となります。フランス政府は2025年に事前調査費用として1,000万ユーロを拠出しますが、税金の大規模な投入は予定されていません。

プロジェクトのスケジュール

現段階でのざっくりとしたスケジュールは以下の通り。まだまだ今から設計案が決まるという段階なので、詳しいスケジュールは未定です。

2025年1月28日:計画発表(マクロン大統領)
2025年〜年中:国際建築コンペティション、詳細設計
2026年〜:入場料改定、準備・工事開始
2031年:完成予定



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モナリザ専用ギャラリーの誕生

なぜモナリザに独立した空間が必要なの?

レオナルド・ダ・ヴィンチの傑作「モナリザ」は、ルーヴル美術館でもっとも有名な作品。現在、この名画が展示されているドゥノン翼の711号室には、毎日数千人の訪問者が押し寄せます。

ハイシーズンにはモナリザの前にはモナリザを見るためだけの長い列ができ、作品をゆっくり鑑賞することはほぼ不可能。他のすばらしい作品が展示されている周辺の展示室も影響を受けています。

モナリザ専用のギャラリーを設置することで、モナリザをじっくり楽しみ、他の作品も鑑賞しやすくするのが狙い。モナリザの展示室周辺に来場者が集中しがちなので、それを分散させて館内の人の流れをスムーズにする効果も考えられます。

新しいモナリザ専用ギャラリーとは?

新ルネサンス計画では、クール・カレと呼ばれる中庭の地下に約3,000平方メートルのモナリザ専用ギャラリーが建設されます。新ギャラリーは、ルーヴルの通常展示動線とは別に入場が可能な独立したアクセスを持つ予定です。

専用ギャラリーの設置により、ドゥノン翼の混雑が緩和され、美術館全体の訪問環境が改善されることが期待されています。なお、この専用ギャラリーへの入場には、別途チケットが必要になる予定です。

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新しい東側エントランスの設置

ペロー大列柱廊が新しい顔に

17世紀のフランス古典建築の傑作である大列柱廊(Grande Colonnade)は、ルイ14世の時代に宮殿の壮大な入口として建設されました。しかし、1980年代のI.M.ペイによるピラミッドの建設以来、この歴史的なファサードの価値は十分に活かされてきませんでした。

新ルネサンス計画では、この大列柱廊の下に新しい入口が設置されます。歴史的な外観を損なうことなく、現代的で効率的なアクセスポイントを創出することが課題となっています。

混雑解消への期待

新しい東側エントランスの設置により、ピラミッド入口への集中が緩和されます。訪問者はピラミッドと大列柱廊の2つの入口から選択できるようになり、より快適に美術館に入場できるようになります。

また、地下には東西を結ぶ新しい通路が建設され、館内の動線が大幅に改善される予定です。

国際建築コンペティション 5組のファイナリスト

世界トップレベルの建築家が集結

2025年6月28日に国際建築コンペティションが開始され、100件以上の応募がありました。その3分の2は国際的なチームからの提案だったそう。

2025年10月7日には21名の審査員からなる国際審査団が、5組のファイナリストを選出。国際建築コンペティションのファイナリストには、世界を代表する建築家たちが名を連ねています。日本を代表する建築家である妹島和世と西沢立衛のSANAA、そして藤本壮介も含まれています。

〈5組のファイナリスト〉

Amanda Levete Architects(AL_A
Architecture Studio & Diller Scofidio + Renfro
SANAA + Dubuisson architectes
藤本壮介
STUDIOS architecture

Dubuisson architectes + SANAAの組み合わせは、日本建築の繊細さとフランスの伝統が融合したチームです。SANAAは、すでにフランス北部のルーヴル・ランス美術館を手がけていて、光と透明性を巧みに扱う建築哲学で知られています。

藤本壮介アトリエ・パリは、自然と建築の複雑な関係を探求する日本の著名建築家です。地下空間の拡張において、原始的でありながら未来的な空間体験を創出することが期待されています。

Architecture Studio & Diller Scofidio + Renfroは、フランスとアメリカの実力派事務所の組み合わせです。ニューヨークのハイラインなどで知られるDS+Rの参加は、革新的なアプローチが期待されます。

AL_Aは、イギリスを代表する建築家アマンダ・レヴェットが率いる事務所で、リスボンのMAATやロンドンのV&A美術館の新ギャラリーを手がけています。

Architecture Studio & Diller Scofidio + Renfroは、アメリカの2つの事務所の合同チームです。ディラー・スコフィディオ+レンフロは、ボストン現代美術館、リンカーンセンターなど数々の施設を設計。

審査の基準は?

審査団は、歴史的建造物への敬意と現代性のバランス、持続可能性、訪問者体験の向上、そして実現可能性を基準に最終案を選定します。2026年初頭には、パリを象徴する美術館の未来を形作る建築家が決定されることになります。

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2026年からの入場料変更

EU域外からの訪問者は値上げに

2026年1月14日から、ルーヴル美術館の入場料が値上げされます。値上げの理由の一つが、この新ルネサンス計画の資金調達です。

今回の値上げで、EU(欧州連合)およびEEA(欧州経済領域)域外からの訪問者の入場料が、現行の22ユーロから32ユーロへと45%値上げされます。

 ルーヴル美術館再値上げについての記事はこちら ⬇️

この値上げにより、年間約1,750万から2,000万ユーロ(約26億から30億円)の追加収入が見込まれています。この資金は、新ルネサンス計画の実施とセキュリティ強化に充てられます。

他の美術館・施設も追随

ルーヴルの値上げに続き、フランスの他の主要文化施設も同様の措置を発表しています。ヴェルサイユ宮殿は、ハイシーズンに35ユーロ、ローシーズンに25ユーロとなります。ロワール地方のシャンボール城は、19ユーロから29ユーロに値上げされます。

工事期間中のルーヴル美術館営業について

ルーヴル美術館は閉館しないの?

多くの人が心配されるのは、工事期間中に美術館が閉館してしまうのではないかという点です。しかし、ルーヴル美術館は工事期間中も完全閉館はせず、部分的に開館を続ける予定です。

展示室の一部閉鎖には注意

ただし、工事の進行に伴い、展示室の一部は順次閉鎖される可能性があります。モナリザや他の人気作品は、工事中も鑑賞できるよう移動や専用スペースでの展示が計画されています。

訪問前の確認が重要

パリ旅行を計画する際は、ルーヴル美術館の公式サイトで最新の開館状況を確認することをおすすめします。特定の展示室や作品を目当てに訪問される場合は、事前の確認が特に重要です。

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日本でもルーヴル美術館の所蔵作品を楽しめる機会

2026年「ルーヴル美術館展 ルネサンス」開催

パリまで行くのが難しい方に朗報です。2026年9月9日から12月13日まで、東京・六本木の国立新美術館で「ルーヴル美術館展 ルネサンス」が開催されます。

この展覧会の最大の目玉は、レオナルド・ダ・ヴィンチの傑作《女性の肖像》、通称《美しきフェロニエール》の日本初公開です。ルーヴル美術館が所蔵するレオナルド・ダ・ヴィンチ作品が来日するのは、1974年の「モナリザ」以来、実に52年ぶり!

ルネサンス美術の真髄に触れる機会

15世紀初めにイタリアで花開き、16世紀にかけてヨーロッパ各地で隆盛したルネサンス美術の本質的な特徴を、選び抜かれた50点余りの絵画、彫刻、版画、工芸作品を通して体験できます。

レオナルド・ダ・ヴィンチの真筆とされる絵画作品は、世界で15点ほどしか現存しません。ルーヴル美術館はそのうち5点を所蔵。今回来日する《美しきフェロニエール》は、その貴重な1点です。

新ルネサンス計画に伴うよくある質問

工事期間中もモナリザは見られますか?

はい。モナリザは工事期間中も鑑賞可能です。専用ギャラリーの完成までは、現在の展示室か一時的な展示スペースで公開される予定です。

2026年の値上げは日本人にも適用されますか?

はい。日本はEU・EEAに含まれていないため、2026年1月14日以降は32ユーロの入場料となります。

工事が完成するのはいつですか?

現在の予定では、2031年の完成を目指しています。ただし、大規模プロジェクトのため、スケジュールが変更される可能性もあります。

完成後の年間訪問者数はどれくらいを想定していますか?

新しい設備により、年間最大1,200万人の訪問者を快適に受け入れられるようになることが目標とされています。

ルーヴル美術館の「新ルネサンス計画」は、世界最大級の美術館が直面する課題に正面から取り組む、野心的なプロジェクト。モナリザ専用ギャラリーの新設、東側エントランスの開設、老朽化したインフラの全面改修など、美術館のあらゆる側面が見直されます。

工事期間中も美術館は開館を続けるので、この歴史的な変革の瞬間に立ち会うのも貴重な体験になるかもしれません。訪れる際は閉鎖エリアの確認と事前予約を忘れないでくださいね。



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